我が家は、隣の家と密接している。新興住宅街というわけではないが、とある建設業者が10棟あまりを施工した何の特長もない建売一軒家だ。
住めば都というが、たかが知れている。庭は、広くない。狭い道路の目の前には賃貸マンションが冬の日差しを遮っている。
そんな家なのに、どうしてもできたての燻製チーズや燻製たまごでビール片手に一杯やりたいという衝動が抑えられない。
チーズの燻製 / ivva
なんだろう。この感覚。食材を煙で燻している瞬間の、あの手持ち無沙汰なひとときが何とも言えない。時間をかければかけるほど、燻す食材が愛おしくなるのだ。
というわけで、今回は燻製ビギナー必見「燻製ライフ」をひっそり楽しむための燻製器ランキングをエントリー。
燻製をこれから楽しむという初心者向けの視点でオススメの燻製器をピックアップ。あれこれ迷っている方の参考になれれば幸いだ。
収納性抜群!いぶし処「お手軽香房 ST-124」
入門編の燻製器においての代表格といえば、アウトドアブランドのソト(SOTO)の「いぶし処 お手軽香房 ST-124」だ。「いぶし処 お手軽香房 ST-124」最大の特長は折りたたんで収納できる点だろう。
燻製器はその体積が大きいほど食材の自由度が増す。しかしながらその分、燻製器を買っても置き場所に困る。
広い家に住んでいるなら話は別だが、そうでない場合は意外と収納スペースに困るはず。そんなとき第一候補に挙がるはずなのが、この「いぶし処」だ。
見た目はなんてことないただの四角いアルミの箱だ。しかし、使用後は折りたたんで収納ができる。価格も3千円を切るぐらいと手ごろなので、サラリーマンのしがない小遣いから捻出してもさほど苦にならない。まさに初心者向きの逸品だ。
だいたい夫の趣味で使うツールは収納スペースが大きいほど妻から煙たがられる傾向があると思うが、これならコンパクトに折りたたんでしまっておけるから、迷惑をかける心配がない。実にありがたい設計だ。
扉の「いぶし処」と江戸文字で書かれたデザインは、好みが別れるところだが、むしろ陳腐な渋さが憎めなくもない。いいじゃないですか。
もちろん、欠点もある。本体そのものが軽いからか、地面に置くと多少グラグラする。ゆえに、ベーコンなど食材が大きいものを燻製するのは苦戦するはず。食材を置くスペース(網)が小さいため、多くの食材を一度には燻せないことは考慮すべきかもしれない。
また、折り畳み式であるがゆえなのだが、本体の隙間から煙が漏れる。密閉度が低く、燻製効率はお世辞にも良いとはいえない。
それでも燻玉や燻製チーズを作る分には、不自由を感じることはない。気軽に燻製ライフを楽しめる。
言ってみれば上級者向きではないが、初心者なら燻製の醍醐味を存分に味わえる…というわけだ。
ちなみに、燻製ビギナーなら「ソト(SOTO) いぶし処 スモークスターターキット ST-124SK」をチョイスすることをおすすめしたい。
こちらはスモークスターターキットと呼ばれているように、本体の燻製器だけではなく、燻製を始めるのに最低限必要な「スモークチップ」、「スモークウッド」、「温度計」などをセットしている。なのにAmazonプライスで4千円以下でゲットできるのだから、こちらのほうがお得だ。
燻製デビューには申し分ない逸品だろう。
コストパフォーマンス大!「ソト(SOTO) 燻家 スモークハウス」
とにかく安く済ませたいなら「ソト(SOTO) 燻家 スモークハウス」がオススメだ。
素材がダンボールで出来ているため価格は激安。Amazonで千円前後で入手可能だから、価格でためらう人は少ないだろう。「ダンボール」とはいえその実力はあなどれない。強度もそれなりにあるし、5〜6回使っても、何ら問題ない。デメリットは水でジャバジャバ丸洗いできないぐらいか。
ただ気をつけるべき点もある。商品の性質上、雨や風など悪天候時には心許ない。特に風が強い日は本体に火が燃え移ることも考えられるため、スモーク中は目を離せないはずだ。さらにダンボールが燃えてしまう危険性を考えると、熱源を必要とする熱燻には不向きだろう。
スモークウッドによる燻製を一回でもいいから試してみたいというユーザーなら、「ソト(SOTO) 燻家 スモークハウス」一点買いだ。物は試しに…っていうユーザー向きである。
本体の他に付属品は、ミニスモークウッド(さくら)、アルミ皿、金棒、金アミ1枚、フックが4本。サイズは、230x230x520mm(組立時)となっており、先に紹介した「いぶし処 お手軽香房 ST-124」よりも、ひとまわり大きい。
ダンボール燻製器なら自作するのも楽しいが、手っ取り早く燻製するにはベストチョイスだろう。
伊賀焼土鍋「いぶしぎん」
マンション住まいや家の事情で「どうしても煙を出したくない」という場合は、伊賀焼土鍋「いぶしぎん」がオススメ。
天保3年(1832年)に築窯。伊賀焼の伝統を今も継承し続けている長谷園の逸品がコレ。「いぶし処(お手軽香房 ST-124)」よりずっと値段が張るが、手に入れれば一生モノの燻製器になること間違いない。
サイズは大、中、ミニの三種類。なぜかミニだけが「小」ではなく「ミニ」と英語なのが気になってしまうが、まぁそれはそれ。
価格は6千円代からとやや高め。燻製ビギナーにとって決して安い買い物ではないはずだが、この価格帯で煙出でないという超魅力的な機能を備えているのは「いぶしぎん」をチョイスする最大のメリットといえよう。
燻製キッチン_008 / TAKA@P.P.R.S
煙が出ないのは、鍋のフチに水を注ぐことで煙を外に出さない仕組みになっているから。当然ながら、室内やマンションで燻製をしたいという人には選択肢のひとつになるだろう。近所迷惑を考えることなく燻製ができるためクレームはほとんどないはずだ。
You Tubeで公開されている動画を確認してもほとんど煙は立っていない。
その名のとおり「いぶしぎん」というだけあって、品質グレードはハイクラス。伝統の伊勢焼きは「遠赤外線効果が高く食材の芯までじっくり熱を伝える」ゆえ、燻製器であることがもったいないぐらいだ。その分、価格も割高なのだが燻製は体積に応じて自由度が増すのだから、どうせ買うなら中サイズか大サイズがオススメだろう。ミニを買って、あとから追加購入するのは、逆に安物買いの銭失いになりかねない。
SOTO(ソト) スモークポット
伊賀焼は手が届かないというなら、美濃焼の燻製器はどうだろう。
シンプルだが丸みのあるフォルムは妙に引きつけられる。眺めているだけで愛くるしくなるのが「SOTO(ソト) スモークポット」だ。
まったく煙が出ないわけではないようだが、燻製器の中でも密閉性が高く、短時間で燻製が完成するのが特長。Amazonのレビューによると換気扇を回せば、キッチンでも使用できるため、マンションでもいけるようだ(匂いがないわけではない)。
スモークウッドは使えない。冷燻、温燻は不向き。熱燻専用の燻製器として購入するなら良いだろう。ガスコンロで使用するものだが、IHは使えないので注意したい。
パナソニック ロースター けむらん亭
金銭事情に余裕があるなら、この際「パナソニック ロースター けむらん亭」はどうだろうか。
価格は2万円前後の高価なものだが、燻製機能を搭載したスモーク&ロースターは特筆すべきメリットがある。
14層の触媒フィルターと強制排気ファンで煙、においを約90%カット。切身、干物がさらに上手に焼き上げられます。
という優れもので、狭い室内でもガンガン燻製ができるなんてまさに夢のようだ。
家族からはもちろん、近所からのクレームも気にする必要なし。これさえあれば、一年中、好きな時に燻製が楽しめるのだから恐れ入る。
個人的には多少煙いぐらいが燻製の風情があって好きなのだが、場所や時間を選ばず、いつでも燻製づくりができるという点においては、これ以上優れた商品はないと断言できる。都会に住む燻製マニアにとっては、まさに救世主的存在だろう。
ちなみに燻製だけではなく、魚を焼いたりすることもできる。高いだけはある。
カラーバリエーションは、先に紹介したブラウンの他に、ブラック、シルバーの計3種類存在しているようだ。
まとめ:燻製を始める前に
燻製器については以上が選択肢としてオススメになると思う。
細かいことをいえば他にもあるだろうが、上記からチェイスしておけば、まず失敗しないだろう。
とにかく燻製器がないと燻製はできないから様々なツールを買い揃えるわけだが、比較的高価な煙が出ない燻製器をチョイスするなら別に何の事はないが、そうでない場合は、燻製器を買う前に奥様を説得することをオススメしたい。
「燻製始めたいんだけど…」
「はーっ!?(怒)」
なんてならないことを願うばかりだ。
ちなみに私の場合、一年かけて燻製に関する免疫をつけるよう強化作戦を実行した。
友だちが燻製を楽しんでいる→燻玉や燻製チーズを食べるとたまらなく美味しい→きっと君が好きなワインに絶対合うはず!→一緒に楽しもう!→あ、でも煙を出さない方法はあるか検討してるんだけどね→たとえばこんな感じで…
などなど、一年かけて何気なくつぶやいていた。
ここまで入念にやるかどうかはさておき、住宅地に住んでいるなら多少の配慮は必要とするだろう。
燻製を始めるのにこんな苦労はしたくないが、これも含めて燻製の醍醐味と考えた。苦難ばかりの毎日だが、それらを乗り越えて作る燻製チーズは何ともいえないほど美味い。とにかく燻製ビギナーの皆さんの検討を祈りたい。
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